平成18年12月17日号
第7回 不断の向上心、仲間と共に退屈との闘い
研修が半年にさしかかった頃、購買部への配属が決まった。購買部にいた先輩社員が退職し、欠員が出たからだ。配属先での仕事は、いわゆる倉庫係。仕入れた部品に不備がないかを検品し、倉庫にて管理し、必要なときに払い出すというものだった。 あくる年の4月、購買部での仕事にも慣れてきた頃、部品倉庫係が部品検査係から独立した組織となり、渡邉の部品倉庫係への配属が決まった。
「当時の機械は、今ほど種類も多くないし、複雑じゃなかったから」どの機械にはどの部品が必要か、全て覚えてしまうまでに、時間はそう必要なかった。いったん覚えてしまえば、あとはひたすら退屈だった。「この仕事が、自分にとってどう役立つのだろう」発展性を見出すことができず、いかに楽をするか、いかにサボるかを考える日々。渡邉はよくサボっているらしい。そんな噂があったのか、なかったのか。ある日、上司から声がかかった。 忙しさの中で
サボることに向いていた意識が、自己の向上へと変わった。先輩について取引先へ出かけたときには、折衝の仕方、やりとり、ほんの細かいところまで観察した。先輩に追いつきたい。その想いが彼を動かした。 担当を持つようになると、先輩から盗んだ技を活かし、突っ走った。経験豊かな仕入先の担当者との交渉は、成長と自信につながった。「裏で、ある程度の話がついていたんだろうけど。でも、自由に交渉をさせてもらうのはとてもいい経験になった」刺激的な日々だった。 工務での仕事に慣れてくると、次第にマンネリを感じるようになってきた。 異動した先は部品課。主に、修理に使う部品を調達する部署だ。どんどん仕事が入ってくる時代。仕入先の供給ペースにも限界があるので、他部署と
の間で部品の調達競争が起きるほどだった。部品課は工務に比べて発注数が安定しないので、仕入先から見た優先順位もおのずと低くなってしまう。そのため、なかなか部品が調達できない。部品を少しでも早く手に入れるために、過去の発注の流れを検証してみたところ、加工時の工程間での時間ロスが大きいと感じた。「材料は手に入るんだけど、なかなか加工が進まないときもあって。工程間のロスをどうにかしたかったから、複数の工程をまとめてやってくれるところから仕入れるようにしたんだ」多少なりとも改善が見られたことで、無駄を見つけ、なくしていくことの大切さを改めて実感した。そして、チームワークの大切さも。 ひとりじゃないから
当初、『東京へ』という話がきた。「覚悟はしていた。会社が言うことだから」ふたを開けてみれば、購買部への異動。実に20年ぶりの購買部だ。不安はあったが、働き始めてみると、大筋では以前と同じだった。「40歳の新人でも、違和感なく働けたよ。とても面倒な仕事だけど」 購買部にも慣れてきた頃、工務から払い下げられたコンピュータを手に入れることができた。「楽に仕事をするために、部品に勝手に番号をつけて管理し始めたんだよ」仕事に余裕ができて、ゆったりと働くことができた。それが目に留まったのか、タイミングが合ってしまったのか。全社的な生産管理システム構築に参加せよと、お声がかかった。「わからない、できない、って逃げようと思ったんだけど、話を持ってきた室町さん(元管理グループ顧問)が直属の上司になったから逃げられなかった(笑)」 現常務の磯輪保之やシステムの担当者らと、部品にコードや番号をつけシステムを作り上げていった。「コードは、設計から手書きで上がってくる部品表に書き込んでいたよ。設計のやり方とは連動してなかったから。不便だった」最終的には全社的な整合性を持たせた。これが、現在ISOWAで稼動している生産管理システムへとつながっている。 その後、加工のマネージャーとして組織の再編、仕事の見直しに取り組んだ。「ひとりで頑張ってもどうにもならない。みんなで動いてきたからどうにかなった。これまでも、ずっとそうだった」 現在は、購買部のマネージャーであると同時に安全管理者として、社員の安全に心を砕いている。 |